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とうとうお別れの日がきて、女の子はとてもかなしく、さびしいのだが、みんなはおじさんとの別れを当然のように受け入れている。「あと4時間で毛糸も終わりなんだね」いたたまれずに話しかけると、「そうだね」と、おじさんもそれほどかなしそうでもない。
そして、予定されていた通り、毛糸は美術館から取り外され、いつもの生活が戻ってくる。美術館も、学校帰りの通りにある、いつものがらんとした建物でしかなくなる。
女の子は、ときおりあのときの楽しかったひとつひとつを思い出しては、もしかしてまたあのおじさんが戻って来るのではないかと思うときがある。しかし季節が過ぎても、美術館は無表情のままだった。
夏になり、秋が来て、冬が過ぎる。そうしてもう楽しかったその記憶も、思い出にかわってしまった頃、女の子は目にするのだ。春になって、またあの美術館の白い影に、いろとりどりの毛糸がたなびいているのを。
「戻って来たんだ!」
女の子が駆け込むと、そこには懐かしいあのおじさんが、毛糸を建物に結んでいるところだった…。
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