連載小説ミス研 作・村上幸江

中学2年生の村上幸江さん(ペンネーム)が、このほど当塾の月刊誌「杜の教室通信」に連載小説第2弾を執筆開始しました。本ウェブにおいても月1回ペースで掲載してまいります。どうぞご期待ください。
なお、すでに完結した連載小説第1弾「ホワイト・カレッジ」についても、近日中に本ウェブにて公開予定です。


第一章 体育倉庫の怪

(1)

黒いカーテン。むし暑い室内。カベにはってある摩訶不思議な呪文のポスター――。
ここは第二理科準備室。ここで活動している学校一目立たない部活 『ミステリー研究部』。
オタク部とののしられ、無いも同然の扱いを受けている可哀想な部活だ。活動内容も地味なもので、『学校の七不思議の研究』という無謀なもの。
こんな部活ながら、やはり部員はいるもので、しかもたったの3人。なぜ廃部にならないのかといえば「あってもなくても同じだし、部費もかからないから」という教師のあたたかい(?)配慮からだった。

(2006.11.28掲載)

(2)

「暑い!」
「しょうがないでしょ。こんな部活…学校がクーラーつけてくれるわけないんだから」
「あーぁ、しょせんオタク部か〜」
そうタメ息をついたのは、この『ミステリー研究部』の部長・石沼十夜(トーヤ)。元バスケ部だったが、脚を故障し、練習が遅れたのに嫌気がさして退部。いまだに『おちこぼれ』と元同志に後ろ指を指され続けている。
「オタク部って、言わないでよ! ぐだぐだうるさいわねっ」
そう怒鳴ったのは、この部の紅一点・山乃美智。元吹奏楽部。がさつな性格がたたって高価な楽器をあっさり壊してしまい、先生に受けた注意に逆ギレして退部。『ろくでなし』があだ名となりつつある14歳。
「あのー、部長?」
そう小さな声で言うのはこの部で唯一の一年・田中一(ハジメ)。真のオタク。
「なんだ、田中?」
「なんか、依頼人みたいなのが来てるんすけど…」
「はぁ?」

(2006.12.8掲載)

(3)

「依頼?…そんなのうけたまわってねーぞ」
「いえ、なんか美化委員の委員長ってお方がいらしてるんすよ」
「まじで?」
田中の後ろから、スッと背の低い女生徒が姿を現した。
「あの…お願いがあるんです」
「はー?」
「お願いって、何のコトかしら?」
山乃が笑顔で問いかけた。
女生徒は少しホッとしたようだ。
「私…美化委員長の中利(ナカトシ)佐奈っていいます。美化委員全体で悩んでることなんですけど…先生方は信じてくれなくて…」
「何があったの?」
田中が少し大きな声で言った。中利は少しためらっていたが、ついに意を決したように口を開いた。
「お願いします。このままでは…ずっと体育倉庫のそうじができません!」

(2006.12.24掲載)

(4)

「体育倉庫のそうじ?」
「あそこは呪われてるんです!」
中利の目には涙。
石沼たちはどうすればいいか分からなくなってきた。
「何があったの?」
「…出るんです」
「は?」
「ユ・ウ・レ・イ」
中利がなぜこのミステリー研究部に来たのかやっとわかった。彼女はここを”お化けおはらい屋”だとでも思ったのだろう。
「あのね、中利さん。ここはただのサークルで、別にユーレイをおはらいするとかそういうセンモン的なことは、霊能者の方にお願いしたほうがいいんじゃない。ほら、最近よくTVに出てるじゃないニワさんとかエバラさんとか」
「お願いします! そんなゆうちょうなことを言っていられないんです!」
「でも、おれたちも別に霊感とかないし」石沼が言う。
「何言ってるんですか!  今までのわが研究部の成果をここで発揮しましょう」 田中がひとり目を輝かせている。
「じゃ、お前ひとりでやれよ」
「え…。」田中の顔がみるみる青くなっていく。
「コイツ、オカルトマニアのくせにこわがりだよな」石沼がこれみよがしにつぶやいた。
「わかったわ。じゃあ、とりあえず現場だけでも見てみましょう」山乃がとうとう仕方ないといった顔つきで言った。

「は! まじかよ」
「いいじゃない。かわいそうよ」
「あ、ありがとうございますう」
心底うれしそうな中利の顔を見ていると「イヤ」とは言えなかった。
「仕方ねーなー」
「で、くわしいこと教えてくれる?」
「は、はい! 最近、美化委員は、バスケ部やバレー部が使い終わった後の体育館のフロアを掃除するんです」
「それで?」
「そうすると…絶対、ボールが一個、ステージの上に残ってるんです。そういうことが、2,3日つづいて、そしてとうとう…」
「そしてとうとう…何?」
「聞こえたんです。『終わったの?』って、声が」

(2006年12月31日掲載)

 

(5)

 

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